「〜てくる」は、JLPT N3で頻出の文法で、会話でも非常によく使われます。「行って戻る」という動作だけでなく、「変化が現在に向かってくる」という抽象的な意味もあり、学習者が混乱しやすいポイントです。
この記事では、基本の意味・文型・使い方・例文・よくある間違い・練習問題まで、N3学習者が迷わず使えるように丁寧に解説します。
この記事でわかること
- 「〜てくる」の2つの基本の意味
- 行動の移動・変化の方向のイメージ
- 日常会話・ビジネスでの自然な例文
- 「〜ていく」との違い
- よくある間違い
- 練習問題と解説
- 関連文法とのつながり
はじめに
「〜てくる」は、変化が自分のほうへ向かってくるイメージを表す文法です。また、「行って戻る」という動作にも使われ、日常会話では欠かせない表現です。
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1. この文法のポイント(ざっくり概要)
- 変化が現在に近づく
- 行って戻る動作を表す
- 感情・状態の変化が自分に影響する
- 会話で非常に頻出
2. 基本の意味
「〜てくる」には大きく2つの意味があります。
① 動作の方向(行って戻る)
話し手のところへ戻ってくる動作。
- 「ちょっとコンビニに行ってくる」=行って戻る前提
- 「資料を取ってきます」=取りに行って戻る
② 変化が現在に近づく
時間の経過とともに、変化が「今」に向かってくる。
- 「寒くなってきた」=寒さが今に近づいてきた
- 「人が増えてきた」=増加の変化が現在に向かう
②-1 感情にも使える
「〜てくる」は、気持ちや感情の変化にもよく使います。
- イライラしてきた
- やる気が出てきた
- 不安になってきた
②-2 抽象的な変化にも使える。(目に見えない変化)
- アイデアが浮かんできた
- 記憶がよみがえってきた
- 疲れが出てきた
3. 文型
〈動詞て形〉くる
4. 使い方(使える場面・使えない場面)
使える場面
- 行って戻る動作
- 状態・感情の変化
- 徐々に起こる変化
- 自分に影響が及ぶとき
使えない場面
- 「戻る」前提がない移動
- 変化が自分に関係しない場合
- これからの未来の変化(未来のことは「〜ていく」を使います)
×「明日は暑くなってくるでしょう」
→ ○「明日は暑くなっていくでしょう」(今から未来へ向かう変化だから)
○「最近暑くなってきました」(過去から今に向かってきた変化だから)
5. 例文(日常会話・ビジネス)
① 動作の方向(行って戻る)
日常会話
- ちょっと飲み物を買ってくる。
- 友だちが迎えに来てくれた。
- 子どもが急に走ってきた。
- 郵便局まで行ってきます。
ビジネス・フォーマル
- 必要な資料を取ってきますので、少々お待ちください。
- 上司を呼んできましたので、こちらでお待ちください。
- お客様の名簿を持ってきます。
② 変化が現在に近づく
日常会話
- 雨が降ってきた。
- だんだん日本語が話せるようになってきた。
- 暗くなってきたから、そろそろ帰ろう。
- 涼しくなってきたね。
ビジネス・フォーマル
- お客様が増えてきましたので、スタッフを追加します。
- トラブルの原因が見えてきました。
- 新しい問い合わせが入ってきました。
- 市場の動きが変わってきています。
6. 「〜ていく」との違い
「〜てくる」と「〜ていく」はセットで覚えると理解が早い。
| 文法 | イメージ | 方向 |
|---|---|---|
| 〜てくる | 変化・動作が「今・話し手」に近づく | 自分のほうへ |
| 〜ていく | 変化・動作が「未来・遠く」へ向かう | 自分から離れる |
例
- 暑くなってきた(今に向かって変化)
- 暑くなっていく(これから未来に向かって変化)
図でイメージする「〜てくる/〜ていく」


「〜てくる」は、変化や動作が 過去 → 現在(いま)へ向かうイメージ。
例:5年前から今まで徐々に変化してきた。
「〜ていく」は、変化や動作が 現在(いま) → 未来へ向かうイメージ。
例:今から5年後に向けて変化していく。
- 〈Vて形〉きた:過去から続いてきた変化が「いま」に到達
- 〈Vて形〉いく:いまから未来へ向かって変化が続く
7. 日本語教師の視点
7-1. 授業でよくある間違い
私の授業では、学習者が「〜てくる」を次のように誤解することがよくあります。
- × 明日は暑くなってくるでしょう。
→ 未来の変化なので「暑くなっていく」が自然。 - × ちょっとコンビニに行っていく。
→ 「戻る」前提なので「行ってくる」が正しい。 - × 友だちが電話していきました。
→ 動作が話し手のほうへ向かうので「電話してきました」。
学習者は「てくる=過去」「ていく=未来」と覚えてしまいがちですが、実際は変化の方向(今に向かう/未来へ向かう)で使い分けます。この方向のイメージが理解できないと誤用が増えます。
7-2. 学習者の母語による特徴
- 中国語話者:「来/去」の使い分けと似ているが、変化の方向の概念が異なるため混乱しやすい。
- 英語話者:“come” と “go” のイメージに引っ張られ、「変化の方向」を考えずに使ってしまう。
- ベトナム語話者:変化の方向を表す文法が少なく、「てくる/ていく」の違いを状況で判断するのが難しい。
授業では「変化がどこへ向かうか?」を図で示すと理解が早くなります。
7-3. 授業での説明のコツ(板書の流れ)
私は板書で次のように整理しています。
- ① 過去 → 現在(いま)へ向かう変化 → てくる
- ② 現在(いま) → 未来へ向かう変化 → ていく
- ③ 行って戻る動作 → てくる
この「時間の方向」を見せると、学習者が自然に使い分けられるようになります。
7-4. 教室でよく使うリアルな例文
- 学生が「プリントを忘れました」と言ったので、取りに行ってきた。
- 授業が始まる時間が近づいてきた。
- 教室がだんだん暑くなってきたので、窓を開けた。
- 学生が急に走ってきた。何か忘れ物をしたようだ。
教室の場面を使うと、学習者が自分の経験と結びつけて理解しやすくなります。
8. よくある間違い
- ×「ちょっとコンビニに行っていく」
→「戻る」前提なので 行ってくる が正しい。 - ×「これから売り上げが上がってきます」
→未来の変化は 上がっていく が自然。 - ×「友だちが電話していきました」
→自分のところへ動作が向かうので 電話してきました。
9. よくある質問
Q1. 「〜てくる」は過去のことにも使える?
はい。
「変化が今に向かってきた」なら過去形でも使える。
- 例:最近、仕事が忙しくなってきた。
Q2. 「〜てくる」は未来のことに使える?
基本は「今に向かう変化」なので未来には使いにくい。
未来は「〜ていく」が自然。
10. 練習問題
正しいほうを選んでください
- だんだん寒くなって(きた/いった)。
- ちょっとコピーを取って(くる/いく)。
- これから売り上げが上がって(くる/いく)。
- 新しいお客様が増えて(きた/いった)。
- 先生が急に呼んで(きた/いった)。
11. 解答・解説
- きた
→「寒くなる」という変化が 今に向かって近づいてくる。
「〜ていった」は過去から未来へ向かう変化なので、この文脈では不自然。 - くる
→「コピーを取る」という行動をして 戻ってくるのが前提。
「〜ていく」は戻らない方向なので使えない。 - いく
→「これから(未来)」の変化は 今から未来へ向かう方向なので「〜ていく」が自然。
「〜てくる」は変化が今に近づくときに使う。 - きた
→「増える」という変化が 現在に向かって近づいてきたことを表す。
「〜ていった」は変化が話し手から離れていく方向なので不自然。 - きた
→「呼ぶ」という動作が話し手のほうへ向かってきた。
12. 今日のまとめ
- 「〜てくる」は 変化が今に向かう、行って戻る の2つが中心
- 会話で非常に頻出
- 「〜ていく」との違いを理解すると使い分けが簡単になる
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