「〜ていく」は、動作が話し手から離れていくとき、または変化が未来へ向かって続いていくときに使う文法です。「〜てくる」と対になる文法で、方向のイメージを理解すると使い分けが簡単になります。
この記事でわかること
- 「〜ていく」の2つの基本の意味
- 動作の移動・変化の方向のイメージ
- 日常会話・ビジネスでの自然な例文
- 「〜てくる」との違い
- よくある間違い(近づく・離れるの混同)
- 練習問題と解説
- 関連文法とのつながり
はじめに
「〜ていく」は、JLPT N3で頻出の文法で、会話でも非常によく使われます。「離れていく」という実際の動作だけでなく、「変化が未来へ向かっていく」という抽象的な意味もあり、学習者が混乱しやすいポイントです。
この記事では、基本の意味・文型・使い方・例文・よくある間違い・練習問題まで、N3学習者が迷わず使えるように丁寧に解説します。
関連:
→【N3】「〜てくる」の意味・使い方(例文・会話・ビジネス)
→【N3文法まとめ】意味・使い方・例文・比較・練習問題の総まとめ
1. この文法のポイント(ざっくり概要)
- 動作が話し手から離れていくときに使う。
- 基準になる時点から、未来へ向かう変化を表す。
- 過去形(〜ていった)にすれば、過去の歴史や回想にも使える。
- 日常会話やビジネスシーンでとてもよく使う。
2. 基本の意味
「〜ていく」には大きく2つの意味があります。
① 動作の方向(場所から離れていく)
話し手(または基準になる場所)から、だんだん離れていく動作です。
- 友だちが走っていった。
- 鳥が飛んでいった。
- 車が遠くへ走っていった。
② 変化の方向(時間的に未来へ向かう)
「いま」を基準にして、これから未来へ向かって変化が続いていく様子を表します。
- これからもっと暑くなっていく。
- これからも日本語の勉強を続けていくつもりだ。
- 少子化で、子どもの数は減っていく一方だろう。
③ 抽象的な変化(社会や技術など)
社会のトレンドや技術など、目に見えないものが未来へ変化していくときにもよく使われます。
- 新しい技術によって、生活の利便性が高まっていく。
- AIが進化していくにつれて、社会システムが変わる。
- グローバル化により、国際的な問題が複雑になっていく。
3. 文型
〈動詞て形〉いく
4. 使い方(使える場面・使えない場面)
使える場面
- 「いま」から未来へ向かう変化(暖かくなっていく)
- 動作が話し手から離れるとき(あっちへ歩いていく)
- 「過去の特定の時点」から見て、さらに未来へ向かう変化(1990年から人口が減っていった)
使えない場面
- 「過去から現在まで」続いてきた変化
× 3年前から日本語が上手になっていきました。 → 〇 上手になってきました。 - 自分のほうへ向かって近づいてくる動作
× 友だちがこちらに走っていった。→ 〇 走ってきた。
補足:慣用表現「行ってくる」について
「行ってくる」は「行く+戻る」がセットになった慣用表現です。
最終的に動作が話し手のほうへ戻ってくる前提なので「てくる」を使います。
例:
- × コンビニに行っている間、留守番をお願いね。→ 行っていくは不自然
- ○ ちょっとコンビニに行ってくるね!(戻る前提)
5. 例文(日常会話・ビジネス)
① 動作の方向(離れていく)
日常会話
- 子どもが楽しそうに公園のほうへ走っていった。
- あ、見て!鳥が空へ飛んでいったよ。
- 友だちは手を振りながら、駅の改札口へ歩いていった。
ビジネス
- 先ほど、お客様が笑顔で出口のほうへ向かっていきました。
- 社長なら、先ほど会議室へ入っていかれました。
- 前任の担当者は、先月別の部署へ移動していきました。
② 変化が未来へ向かう
日常会話
- もうすぐ7月だから、これからどんどん暑くなっていくね。
- 毎日練習を続ければ、日本語がもっと話せるようになっていくよ。
- SNSのフォロワーが、毎日少しずつ増えていくのが嬉しい。
ビジネス
- 新商品の発表により、売り上げは今後も伸びていく見込みです。
- 市場のニーズは、今後さらに変化していくでしょう。
- 他社との競争により、問題がより複雑になっていく可能性があります。
③ 感情・社会・学習の変化
感情の変化
- 面接の時間が近づくにつれて、緊張が高まっていく。
- 先のことが見えないと、不安が強くなっていくものだ。
社会の変化
- このままでは、地方の人口がどんどん減っていく。
- 日本はこれからも高齢化が進んでいくと言われている。
学習の変化
- 本をたくさん読めば、自然と語彙が増えていく。
- 最初は大変だけど、少しずつ日本の生活に慣れていくから大丈夫だよ。
6. 「〜てくる」との違い
| 文法 | イメージ | 視点・方向 |
|---|---|---|
| 〜てくる | 過去 → 現在へ向かう変化・動作 | 「いま・ここ」に近づく |
| 〜ていく | 現在 → 未来へ向かう変化・動作 | 「いま・ここ」から離れる |
例
- 最近、だんだん暑くなってきた。(過去から「いま」にかけての変化)
- これからはどんどん暑くなっていく。(「いま」から未来にかけての変化)
図でイメージする「〜ていく/〜てくる」
過去 → 現在 → 未来
↑ ↑
てくる ていく
7. 日本語教師の視点
7-1. 授業でよくある間違い
- × 最近、日本語が上手になっていきました。
→ 過去から「現在(いま)」に近づく変化なので「上手になってきました」が自然です。 - × (私の目の前へ)友だちが走っていきました。
→ 話し手に「近づく」動作のときは「走ってきました」を使います。
7-2. 学習者の母語による特徴
- 中国語話者: 中国語の「来/去」のイメージが強いため、空間的な移動は得意ですが、時間的な変化(未来への継続)に「いく」を使う感覚を掴むのに少し時間がかかります。
- 英語話者: “come / go” の物理的な移動イメージで判断しがちです。日本語の「てくる/ていく」は、話し手の心理的な距離感や時間の流れも含むため、そこを丁寧に説明する必要があります。
- ベトナム語話者: 母語に「てくる/ていく」ほど明確に時間的変化の「方向」を意識させる文法が少ないため、現在進行形などと混同しやすい傾向があります。
7-3. 授業での説明のコツ(板書)
- 過去から「いま」に近づく変化 → てくる
- 「いま」から未来へ離れていく変化 → ていく
- 自分から遠くへ離れる動作 → ていく
- 自分のところに近づく動作 → てくる
7-4. 教室でよく使うリアルな例文
- 授業が終わる時間が、だんだん近づいていく。
- 来月からは新しい学生が増えていくので、にぎやかになりますよ。
- JLPTのテストが近づくにつれて、クラスの緊張が高まっていく。
8. よくある間違い(まとめ)
- × ここ3年で、この街のビルが高くなっていきました。
→ 〇 高くなってきました。(「いま」に繋がる変化のため) - × 明日の午後からは、気温が上がってきます。
→ 〇 上がっていくでしょう(未来の予測・変化の継続のため)
9. よくある質問
Q1. 「〜ていく」は過去のことに使える?
→ はい、過去形「〜ていった」にすれば使えます!
「ある時点から見て未来(先)に向かう変化」であれば、過去の歴史や物語の回想でも使えます。
(例:1990年から、この街の人口はどんどん減っていきました。)
Q2. 「〜てくる」との一番簡単な見分け方は?
→ 話し手の「いま・ここ」を中心に考えます。「いま・ここ」に向かって近づく変化は「てくる」、ここから離れていく変化は「ていく」です。
10. 練習問題
( )に入れるのに最もよいものを一つ選んでください。
- 日本の少子化問題は、来年以降もさらに進んで( )と予想されています。
1. きた
2. いく
3. いった
4. くる - あ、見て!飛行機が遠くの雲の中に消えて( )よ。
1. いった
2. きた
3. くる
4. いかない - (日本に着いて3ヶ月の留学生が)日本の生活にだんだん慣れて( )、毎日が楽しいです。
1. いった
2. いって
3. きた
4. いく - これからはAIの技術がもっと進化して( )でしょう。
1. きた
2. くる
3. いった
4. いく
11. 解答・解説
- 正解:2(いく)
「来年以降も」という、現在から未来へ向かう変化を表すため「いく」が正解です。 - 正解:1(いった)
話し手の視界から「離れていく」動作が完了した(目の前から消えた)状態なので、過去形の「いった」にします。 - 正解:3(きた)
「(過去から今まで)だんだん慣れて、今」という過去から現在への変化・プロセスを表すため、「きた」が最も自然です。 - 正解:4(いく)
「これからは」「〜でしょう」という言葉があるように、これからの未来の予測を表すため「いく」が正解です。
12. 今日のまとめ
- 「〜ていく」は未来へ向かう変化、または離れていく動作を表す
- 過去形「〜ていった」にすれば、過去の歴史や回想の変化にも使える
- 話し手の「いま・ここ」から離れるか、近づく(てくる)かのイメージが最重要
- 授業では矢印を使った「時間の方向の図」を板書するのが効果的
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